『カフェ、対話』
「どうせ俺なんか人よりワンテンポ遅れてるくらいでいいんだ。俺と関わってくれるやつは大抵、周りから置いてかれ孤立しちまう。そうして最終的には迷惑そうな顔をしてみんな俺から離れていくんだ。俺はそれを見るのがたまらなく嫌なんだ。お前も俺を迷惑だと思うなら、俺の事なんていっそ置いていってくれ。」
自分で言ったことなのに、ドキッとしてしまった。
「ええ、そうですね。」
彼女の綺麗な黒髪が微かに揺れた。
「それじゃあ、貴方は私よりもワンテンポ多く生きてくださいね。マイペースに生きて、そうしてマイペースに逝けばいいじゃないですか。その代わり、私が死ぬまで一緒にいて。私は貴方を置いていったりなんかしません。」
彼女が想像以上に真剣に、俺の方をまっすぐ見てそんな事を言うのでなんだか決まりが悪くなり俺は視線を窓の外に向けた。
「──ああ、ああ、そうだな。そうする、きっとそうなる。」
そう言うとお互い、黙ってしまった。
ふと寂しくなり彼女の方を見た。しかし彼女の視線はもう、空になったコーヒーカップのほうだった。
12/3/2025, 4:56:01 AM