ストック

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俺と幼馴染みのあいつはずっと一緒だった。
悲しみも喜びもずっと二人で分かち合っていた。
しかし、俺は貴族であいつは平民。大人になるにつれ、二人で一緒にいることは困難になっていった。
何より、平民は貴族ひいては国から搾取されるものだと現実を突きつけられた。

俺はそんな祖国を変えると誓い、自分の地位を利用して騎士団長の地位まで登り詰めた。
表向きには祖国のために働き、裏では祖国を変えるために動く日々は孤独だった。
しかし、騎士団の仲間の中に徐々に志を同じくする者が増えていき、俺を支えてくれた。
彼らの存在は俺にとって欠かせないものになった。
彼らと一緒に祖国を正す。それが俺の願いになった。

一方、幼馴染みのあいつは隣国へ亡命した。家族を奪った祖国にいるのは耐えがたかったのだろう。
隣国の兵士になった彼は功績をあげ、騎士団の副団長の地位に就いた。
元々は別国の人間である彼を蔑む者も多かった。しかし、彼の実力を認めて真の意味で力になってくれる仲間も増えていった。
仲間と共にかつての祖国を倒す。それがあいつの願いになった。

あいつと久々に対峙したところは戦場だった。
俺もあいつも、もう譲れないものができたことを悟る。
昔には戻れないことも。

俺たちに言葉はいらない、ただ…静かに剣を構えるのだった。

8/30/2023, 12:50:31 AM