月風穂

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【今日にさよなら】

こんな諄い表現を使ったことがない。
さよならしなくとも今日は勝手に去っていくのであるから、挨拶は無用である。
別れ際でも「さよなら」などと私は言わない。
「じゃあね」とか「またね」が妥当であろう。

ともすると私は過去に未練があるのだろう。
「さよなら」は、相手に対する決別の意味合いを持っており、「じゃあね」とか「またね」は再開を前提にした挨拶である。
つまり「今日にじゃあね」とか「今日にまたね」というのは、やってこない今日という日の再開を願っているという、時間概念を考慮しない浅はかな言葉であるのだ。


「今日にさよなら」と言ったなら、明日には何と挨拶をすれば良いのか。
「明日におはよう」であろうか。
明日は正確には午前0時~であるから、朝日も昇っていないのにおはようは場違いである。
NHKでは午前4時頃から「おはよう」というようである。
ではそこまでの0時~4時までは何と挨拶をするのであろう。
まだ夜であるから「こんばんは」が妥当か。
だが私たちは始まりの挨拶を「おはよう」と考えなしに発している。
一日の始まりが「こんばんは」とは聞いて呆れるってもんである。

こんなときに使いやすい挨拶は「お疲れ様です」である。
社会人になると知らぬ間に毒されているこの言葉は再現性が非常に高い。
まだ疲れてもいないのにお疲れ様。
これから訪れる疲労を前提として「お疲れ様」と前もって挨拶をするのだ。
「明日にお疲れ様です」ということだ。
それならば「(陽が昇ってないけど)明日におはよう」でも扱いは同じではないか。
が、そう言ってしまえば私が考えたこの時間が無駄になるので、この結論は論外である。


こんな下らないことを考えながら、私は今日にさよならをするのである。
実に間抜けだ。お疲れ様である。

2/18/2024, 12:31:52 PM