ツユクサ

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お題「終わらせないで」

ぼんやりと、祖父が刀を眺めるのを横から見ていた。刀身がキラキラしていて、縁が白い結露が顔を出して、窓から暗い夜の雪景色を眺めるような冷たさと、輝き。

これが、人を殺せる道具。

ぞわりと背筋に霜が降りたような感覚がした。これを肌に滑らせれば、ぷくりと血が出て、ズキズキと痛み始める。
でも、どこか、語りかけられていた気がした。

私はお前を傷つけたりしない。
私は綺麗だろう。
お前も私をよく見てみると善い。

「見てみるかい?」
タイミングがよく刀鍛冶の彼は私にそう問うから、思わずたじたじしながら「いいんですか」と聞けば、私にハンカチと柄を差し出してきた。

確かに、きらきらかがいて、きちんと向き合ったら、月夜に見上げた、雲の流れる空のようだった。綺麗だ。

でも、祖父が見ていた時よりも何故か輝きがない、気がする。故に、祖父に返した。

「もういいのか?」

「うん。なんか、刀は私じゃない方がいいみたい。」

頷きながら、その手の中に戻す。すると、やはりその手の中のほうが綺麗に見えた。

その刀はきっと、祖父の手の中でしか、ああは輝かないのだろう。
それを終わらせないでほしかった。

11/28/2024, 11:40:04 AM