Fuyu

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「お願いします、付き合ってください!」

またか、とため息をつく。
大学内の食堂にて、一人で昼食を食べていたのだが、目の前のそいつによってその時間は奪われた。
周りは一瞬静まり返り、その後なんだなんだとこちらを覗くようにして見ている。

「あ、へへ…すみません、でっかい声出しちゃって。偶然見つけちゃったので、つい」

へへ…じゃない。
何回も迫ってくるこいつのせいで、毎回周りからの視線が痛いし恥ずかしい。

「たしか、一年の子よね?ごめんなさい、前も言ったけど、それには答えられないの」
やんわりと断るのも嫌になってきたなと、カレーライスを口に入れる。

「どうしてですか?…理由を教えてください、納得できないんです!」
いつのまにか、目の前に座っていたこいつは前のめりになって聞いてきた。

「…いつも言ってるでしょう。私と付き合った人は、絶対に死ぬって」
「それが納得できないんですよ!」

それは私も同じだ。
そんなの、現実ではありえないからだ。
だが、過去に私と付き合った人は1週間以内に何かしらの事故で死んでしまった。
一種の呪いのようなものである。

「だから、1人でいたいのよ。私は」
食べ終わった食器を返却口に返しに行こうと立ち上がったその時、

「じゃあ、お友達からはどうでしょう!これだったら、付き合ってることにはなりませんよね」

次の日、うまく言いくるめられた気がする私は、
その子と遊ぶ約束をした。
…正直、楽しかった。
その子と過ごしていた時に笑みがこぼれていたほどだ。私はそんな私に驚いていた。

数週間ほど経ったある日、私は彼女に言った。
「その…付き合うって話、まだ有効かしら?」
そう言うと、その子は目をパチクリとさせた後、
街中に響くほどの返事をくれた。

その日の帰り道、私達はビル街を歩いていた。
お気に入りの喫茶店があるから、帰りに寄って行こうと誘ってくれたのだ。

ここです、と私の一歩先を行った時、
周りで悲鳴が上がった。
私がその子の名を呼んだときには遅かった。

まるで、今まで降り掛かっていた呪いが襲いかかってきたように。
私はあのことを忘れていたのだ。

ビルの上から看板が降ってくる。

ああやはり、
こんな気持ちになるなら一生私は一人でいたい、

私は過去の自分を呪った。

7/31/2024, 1:37:25 PM