「どこへ行こう」
私にはどこにも居場所がない。それは家でさえも。
今日は7回目の家出。
いつもの家出と違うところは、もう家には戻らないと言うこと。
私の命の灯火は、あと1年半で消えてしまう。
私の最後の場所は私で決めたい。どこにも居場所がないんだ。最後くらい自分だけの居場所を見つけたい。
そうして私は旅に出た。
最初はどの景色も綺麗で、とても色鮮やかで、自撮りなんかもしてしまった。
紅葉が綺麗だと聞いて弱い心臓で山頂まで登ってしまった。
どこかの大学にイケメンが居ると聞いて見に行ってしまった。
インターネットの人とだって会ってしまった。
長らく会っていなかった友達に会ってしまった。
旅の2カ月間はとても楽しかった。
だけど私の命の灯火は、刻々と徐々に弱まっていった。
旅に出て4ヶ月目になったある日、心臓が悲鳴を上げた。
つまり発作だ。
幸い山に登っているわけでも、誰かと会う約束をしている訳でもない。
だが、ここは超大型のショッピングモールだった。
人が沢山いる。
(いや、助けてくれる人が居ないと困るけど、いっぱい人が居るのは嫌だ…)
私の意識が遠のいていく中、叫び声のようなものや、面白がって動画を撮って居るであろう人達の声が聞こえてきた。
幸い数十人の優しい人達が、私に駆け寄ってきてくれ、救急車を呼んでくれた。
目覚めた時に最初に目に映ったのは、病院であろう天井だっだ。
ふと左手に暖かい何かを感じ左を見てみると、知らない若い男性が手を握り、ベッドに頭を預け眠っていた。
推定20代前半。
(ショッピングモールで助けてくれた人?いや、でもなんでここに?)
これは夢だろうか。
そんなことを思ったのもつかの間、心臓の痛みですぐに現実だと分かった。
心臓の痛みでふいに、左手にある若い男性の手をぎゅっと握ってしまった。
握ってしまったからか、はたまた私が痛みのあまり小さなうめき声を発してしまったからか、知らない若い男性が起きてしまった。
若い男性は私が起きたのを見ると、ガタガタと椅子から立ち上がり、待っててと告げて慌てて病室の外に出て行った。
私はあまりの素早さと頭の後ろについていた寝癖を見て、私は久しぶりに本当に心の底から笑った。
(あれ?心臓が痛くない…?)
なぜかさっきまで痛かった心臓の痛みが、今は治まっている。
そして彼は先生を呼びに行っていたらしく、先生を連れて、病室に帰ってきた。
私が彼の頭をジーッと見ていると、彼が寝癖に気付き顔を赤くし耳まで赤くしていた。
そんな可愛い彼を見ているとまるで、今にも燃え尽きそうだった命の灯火が、回復しているかのように思えた。
そして先生からのお話が終わり、もう外に出ていいとの事で私と彼は病院の外に出た。
ふと隣に立っている可愛いイケメン君に声をかけてみた。
「君はもしかしなくとも私の命を救った、命の恩人かな?」
そんな彼は頭を横に振り、私の言葉を否定した。
「俺は君を助けた人じゃないです。君を助けた人や救急車を呼んだ人は違う人です。」
予想外の言葉に唖然としていると
「あなたが苦しそうに助けてと何回も言っていたから、救急車が来るまで手を握ってたんですけど。
救急車が、来てからも手を離せずにいたら知り合いだと思われたようで、君も一緒にと救急車に一緒に乗って…って感じでした。」
「すみません勝手に手を握ってしまって、その上眠ってしまっていたなんて…」
そんな彼の頭にはションボリしすぎて、垂れた耳が見える気がしてきた。
そんな可愛い彼と、残りの人生一緒に過ごしたいと思ってしまった。
そんな私は彼に惚れたと告白し、何度も断られた。だけど、私が何度も折れずに告白していくうちに、次第に彼は私に惹かれたのだろう。彼は何回目かの私からの告白で顔を真っ赤にして、私からの告白を受け入れた。
私と彼は付き合うことになった!
もちろん私には残された時間は少ない。
もちろん私の寿命のことは言ってある。
彼と色んな事を、残りの時間でしたい。
彼と過ごして1年が経った頃、私の命の灯火は燃え尽きようとしていた。
私の体は痩せて細くなり、1年前とは全く違う私に彼は変わらない愛を注いでくれた。
私と彼の最後の場所は桜舞う病院の公園だった。
公園ではしゃいでいる子供を見て彼が思いがけない言葉を発した。
「あなたとの子供が欲しいな」
そんなことを言う彼は、出会った頃の病室での寝癖を私に見られ恥ずかしそうに顔を赤らめていた時の顔と全く一緒の顔をしていた。
私はそんな君の、私との未来についての言葉に泣いてしまった。
だって、私にはもう時間がない。
あなたの隣だから今だって息ができる。
あなたと一緒に居るからまだ私は生きている。
君が私との未来を考えてくれた。それがとても嬉しくて、今の私には残酷だった。
彼は私の涙を拭い、
「もしもこの人生をやり直せるとしたら、物凄く勉強をしてあなたのその病気を治したいな」
なんてことを言った。
そんなたわいもない話をしていた頃。突然眠気がやってきた。
まだ寝たくない、まだあなたと話したい。
そんな気持ちとは裏腹に、瞼が重くなっていく。
それを悟ってのことか彼は私を強く抱きしめて、
「大好きだよ。俺の初恋で、最初で最後の恋人。
愛してる。ずっと一緒だよ。おやすみ、結。」
微笑んでいた。
最後の力を振り絞って私も言ったんだ。
―――愛してる、初恋で最初で最後の恋人―――
―――私だけの居場所、おやすみなさい翼―――
そして私は深い眠りについた。
「という感じです。神様、私が死ぬまで抱いてきた感情の話をしたんですから人生やり直させてくれるんですよね!」
私は死んだはずだった。だけど私は今なぜか神様と話している。
何やら私は神様からみたら可哀想な人間だったらしく、私がこれまで抱いてきた感情の話をしたら人生をやり直せてくれるらしい。
私は私だけの居場所を見つけた。
私はその居場所を誰にも譲る気はない。
だから、もう一度あなたとやり直す。
あなたの隣で。
こんにちは!お久しぶりです(*⌒▽⌒*)
今回は結構長い小説になりました!こんなに書けて嬉しい(≧∇≦)b
是非最後まで読んでくださると嬉しいです!
次の間作品で会いましょう!
4/24/2025, 12:41:19 AM