ストック1

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あー、ヤバい
緊張する
なんでこんな大役に選ばれちゃったんだ
僕が希望してたのは別の役回りなのに
始まるのはもうちょっとあとだけど、足が震える
僕には荷が重いよ
これ、僕がミスったら全部台無しだもんな
こんなに緊張してるの、人生で初めてじゃないの?
ていうか、これ絶対みんなが嫌がった結果だよね
決める時、僕は風邪ひいて休んでたからね
こんなの誰もやりたくないっていうのはわかる
わかるんだけどさ
風邪ひいてその場にいなかった僕に押し付けるのは卑怯じゃないかな
まあ、そんなこと言ってもしょうがないけどね
それに押し付けた手前、僕がミスしても責めるに責められないでしょ
だから、そんなに気負わなくても大丈夫かな
……と思えれば楽なんだけどね
僕はそんな楽観視できない、心配症の緊張しいな人間なんだよ
あー、そろそろ始まるぞ
ついに開始だ
僕の出番はまだだ
みんなが頑張る中、棒立ちしていないといけないのは地獄の時間だな
終盤に差し掛かった
もうすぐ僕の出番だ
みんなの合唱が終わるぞ
終わった、今だ!

「ランラララン!!」

最後の締めの歌唱
この最後の声が僕の唯一の出番だった
なんとか、台無しにせずにすんだ
タイミング、音程、ともに完璧!
文句なし
よくぞ緊張に打ち勝った、僕!
周りも、ホッとしたような顔をしている
出番は一瞬だけど、みんなから称えられてもいい働きをしたと思うよ
恐ろしい役回りだったけど、うまくいってよかった
もう二度とごめんだけどね

6/26/2025, 11:09:12 AM