ミキミヤ

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日直の日。

「麻生くん、ごめん、わたし、上まで届かなくて」

黒板の前で、日直のペアの新井さんが申し訳なさげに手を合わせている。

「いいよ。気にしないで。こういうのはできるやつがやればいいんだから」

俺は、何でもないことのようにサラリと答えて見せた。まあ、実際大した手間でもないし何でもないことなんだけど。

「麻生くん、ほんっとありがとね」

新井さんが笑ってお礼を言ってくれるから、俺はついついこうやって調子に乗ってしまう。

新井さんは、小さくて可愛い。小動物的な、庇護欲をそそられる可愛さがある。俺はいつも隣の席で彼女のことを盗み見ながらそんなふうに思ってるわけなんだけど、彼女と接するときは努めて何でもないフリをしている。だって、考えてることが彼女に伝わっちゃったら、いろいろ終わる気がするから。

黒板を消し終わって、席に着く。先生が入ってきて、新井さんの号令で授業が始まる。
俺は今日も何でもないフリをしながら、隣の彼女を密かに見つめるのだった。

12/12/2024, 8:48:00 AM