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相澤はよく学校を休む。
体が弱いのなら、四六時中騒いだりせず大人しくしていればいいのに。

きのう相澤の家の近くへ行ったから、ついでに寄ってみるとゾンビみたいな顔色で笑って出迎えてくれた。
どうやら雪にダイブして遊んでいたら風邪をひいたらしい。馬鹿だ。

「なんにも上手くいかないなら、せめて笑ってた方がいいだろ?」
「お前の笑顔は投げやりなんだ。」
これが僕らのお決まりの会話だ。
そしてどうやら、きのうがお決まりの最後だったらしい。

相澤は学校に来なくなった。
先生は病気を拗らせたのだと言った。
相澤の家を訪ねても、誰も出てこなかった。

僕は唯一の友人を突然失い、怒り半分、心配半分で学生生活を送った。

ある日、配給をもらった帰りに公園を通りがかると浮浪者がゴミ箱を漁っていた。
最近ではよくあることだと無視して帰ろうとしたら、目が合った。
相澤だった。
相澤は笑った。別人みたいな笑い方だった。
僕は頭が真っ白になった。

それでもガリガリに痩せた相澤に配給で貰ったパンを差し出した。
相澤は傷ついたように顔を歪ませたが、やがて奪い取るようにして貪り食った。

それから僕も体調をよく崩すようになった。
だけど相澤のことは未だに何も理解できていないし、笑うこともできない。

12/16/2024, 11:47:33 AM