私には赤い糸が見える。
赤い糸とは、よくある設定の赤い糸のことだ。
他の人には見えないらしい。
一列に並んで登校する子どもたち。
エナメルバッグの女子校生。
ベンチに座る老夫婦。
仕事帰りのサラリーマン。
年齢に関係なく赤い糸は繋がっている。
当然、赤い糸がない者や、
赤い糸はあっても一人でいる者もいる。
しかし意外なことに、
繋がり合っているペアは極めて稀だ。
例えばそこで仲睦まじくしている男女も、
繋がる糸は双方とも明後日の方向へ飛んでいる。
片方には赤い糸がないコンビや、
赤い糸がない者同士も日常的に見かける。
先日やっていたテレビで、
国際結婚をしたカップルが繋がり合っているのを見て、
柄にもなく声が出てしまったのを覚えている。
彼ら彼女らが幸せかどうかはわからない。
しかしこの能力によって、
人を遠ざけてきた私よりもよほど幸せそうに見える。
私の指に繋がった赤い糸。
相手は確実に私にとって素敵な人なのだろう。
そしてそれは相手にとっても同じこと。
私は赤い糸を切った。
こんな糸があっても出会えなきゃ意味がない。
でもなんだか少しだけ、吹っ切れた気がした。
~赤い糸~
6/30/2023, 2:05:33 PM