思い出

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〔これ、受け取ってくれるかな?〕

私はそう言って、透明で小さなケースに入っている
一つの小瓶を差し出した。
楕円型の小瓶は、中に入っている鮮やかな紫色の液体を 私の部屋のライトが反射させており、輝いている。

「もちろん、喜んで。これって香水かな?」

彼女は微笑み頷いて、差し出された小瓶を受け取る。
そして、受け取った小瓶を見つめ、そう聞いてきた。

私は、少し笑いながら答えた。

〔そうだよ。この前、雑貨屋さんとか、色々巡っていた時絶対にキミに似合うと想って買ったんだ。
香りは、使ってみてからのお楽しみ。〕

すると彼女は透明なケース越しに、色々な角度から小瓶を眺めて言った。

「綺麗だね。アメジストみたいにキラキラしてる。
色から考えて見ると、王道はラベンダーかな?」

私の目を見て、楽しそうな声色で、言葉は続く。

「でも、どうして香水なの?学校には付けていけないわ。
折角アナタからの贈り物なのに。」

少し拗ねた顔をした彼女に、私は少しの胸の高鳴りを覚えた。
あざといが、とても可愛い。普段、美しいといった印象の彼女の新しい一面に、内心ドギマギとしてしまう。

私は、それを表に出さない様に彼女から目を反らし、
渡した小瓶をじっと見ながら、

〔…キザだけれど、二人っきりでまた、出かけたときに
付けて来て欲しい。〕

言ってて、恥ずかしくなった。
自分でも何て言ったか曖昧な程、小さい声になってしまった。

それでも彼女にはしっかりと届いていたらしく、
私の顔を覗き込んで、ニヤリと笑った。
そして、

「えぇ、勿論。アナタと会うとき以外は使わないわ。
アナタと私だけの、二人っきりの、ちょっと大人な秘密。」

とても同い年とは思えない程に、美しく、妖艶な雰囲気でひっそりと言った。

二人しか知らない、秘密の香り。
私達の特別で、大切な、香水。

8/30/2023, 11:22:00 AM