▶42.「心と心」
41.「何でもないフリ」
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1.「永遠に」近い時を生きる人形✕✕✕
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「はぁーあ、きっともう✕✕✕は山小屋に着いたわね」
気だるい雰囲気漂う昼下がり。
子猫は窓枠に頬杖をつき、ため息をひとつ零した。
少なくとも寒さが緩むまでは会えない。
いつ会えるかなんて確かな約束をしたこともないくせに、
会えないと分かるだけで、こんなにも面白くない。
面白くない、と自覚すれば目線も下がって、
そのままもう一つため息をついたら、
下ろした髪がサラサラと顔の方に落ちてきた。
小さい頃は不吉と虐められた黒髪。
それでも負けずに手入れを頑張って、今じゃ専売特許。
そのきっかけをくれた私のお人形さんは、今は遠い。
ここは花街、夢を売る場所。
心と心、ぶつかっても決して混じり合わぬ場所。
客は私たちに一夜の夢を見る。
私たちは客に一生の夢を見る。
「ほんと、どこにいるのかしらね」
私の心と、あるのか分からないけど✕✕✕の心も、
付き合いは長いけど、きっとどこか噛み合ってない。
「あ、雪」
小さい頃は雪が好きだった。
白くて、きれいで。全てを覆い隠してくれる気がして。
「もう冬なんて大嫌いよぉ。いー、だ」
早く下りてきて、また話を聞かせて、お人形さん。
12/13/2024, 9:01:40 AM