――もういいんだ。
と、君は言った。
そんな諦めの言葉なんてほしくなかった。いや、僕一人が空回りしてることに気づかされてしまったという方が正しかったのだと今ならわかる。
君の方から手を離された、そんな風に感じていたけれど、そう思いこんで君の手を離したのは僕だ。
君は僕を慮ってくれていたのだろう。君のために全てを捧げていた僕が、そのまま闇雲にあらぬ方向に向かわないように、「もういい」のだと言ってくれたのだろう。
その時の僕は、それに気づくことができなかった。
ただ、君だけが僕を理解しようとしてくれていたのだと、君の手を離してから気づいたのだ。
20250513「ただ君だけ」
5/13/2025, 9:35:42 AM