『ねぇ、何で?』
幼い俺が、問いてきた。俺は少し、笑ってみせた。
「能無しの木偶の坊。」
上司は俺を、蔑むように睨んだ。俺は小さく謝った。毎日、この繰り返し。正直、疲れるし面倒くさい。それでも俺は何もしない。
俺は、貧しい家庭に産まれた。父は屑、母は癇癪持ち。そんな二人の子供が、真っ直ぐ育つ訳もなく。昔から俺は、欠陥人間だと言われていた。自分でそう思った。何故なら俺は、本心から笑った事がないから。家に帰れば、塵扱いされる。学校に行けば、虐められる。それでも何もしなかった。いや、何も出来なかった。何をすればいいのか、分からないから。
でも一度だけ、心から望んだ事があった。その時俺は、死にたいと望んだんだ。家のナイフで、首を刺そうと思った。しかし、寸前でやめてしまった。理由は分からなかった。
あれから社会に出ても俺は、欠陥人間のままだ。時々、脳に幼い自分が、語りかけてくる。
『あの時、死ねばよかったんだ。そうすれば、これ以上恥を晒さずに済んだのに。』
そうだよ。あの時、俺は死ぬべきだったんだ。
『じゃあ何でやめたの?ねぇ、何で?』
何でだろう。分からないよ。
『嘘だ。本当は知ってるんでしょ?』
知らないよ。何も知らないから、何も言わないで。
『生きたいんでしょ?笑いたいんでしょ?』
この世界は不公平だ。それでも俺は、公平を求めている。例え、それが幻想だとしても。あの日、俺が選んだ選択が間違っていないと証明するために。
きっと明日も、俺は欠陥人間だろう。それでも良い。欠陥だらけのこの世界に、俺はお似合いだから。
9/30/2024, 4:02:13 PM