【君が紡ぐ歌】
腐れ縁の友と紅葉並木の道を歩いている。
もみじ狩りをする酔った人々の歌声が聞こえてきた。
あちこちで、音楽を流している人もいる。
世の中は歌に溢れている。
歌手も作曲家も、とにかくたくさんいる。
旋律が世の中を包み込んで、思想や世界観のごちゃごちゃ混ざったもので耳が痛くなりそうだ。
私は歌が好きじゃない。
「やっぱ綺麗だな~。久々の秋じゃね?」
能天気に上を見ている君が言った。
「最近はもう秋ないしね」
私は言った。君は息を吸い込んだ。
君は歌うのが好きだから、詠う時が分かる。
「あらたまの 吹く風に舞う 紅の葉を
思う間もなく 過ぎ去りし日よ」
…そう、短歌が好きなんだ。
「…多分短歌好きなのお前だけだよ」
君はわはははと笑った。
でもきっと、私も君が紡ぐ歌が好きなんだと思う。
君の詠ったその歌の意味を考えてしまうから。
10/20/2025, 4:42:30 AM