小さい頃、私は拡大鏡が好きだった。拡大鏡でものを見ると、なんだか空から景色を見下ろしているように感じがして、ミクロな空中遊泳を楽しんでいた。
ブツブツみかん星、すべすべりんご木星、、、
ホコリを見るとなんだかよくわからないけど、キラキラしてガスみたいだ、ホコリ星雲かな…?
そこでふと自分の手を見たことがないことに気がついた。自分の手に拡大鏡を当ててみる。白い光に照らされた皮膚の組織は透けて見えて、まるで自分の意思とは別に生きているもののように見えた。そこでは指紋の谷が入り組んでいた。そして医師が聴診器を移動させるように、拡大鏡を念入りに手を移動していく。
複雑な指紋の谷はすぐに見えなくなり、単純なシワの谷がしばらく続いていた。思っていたより単調な風景に飽きて、そろそろ他の星の観察へ移ろうかと思った時、突然異質なものが視界に入った。
それは、黒々としていて、まるでぶっといケーブルのようなものだった。拡大鏡を離して見てみると一本の毛が生えている。私は手のそこの部分に毛が生えているなんて知らなかったから、自分の体に見たことがない部分があるという不思議を突然感じた。そして手を少し離して、占い師が手相を見るかのように自分の手を凝視してみた。
そこには見たことのない血管、手の皺、関節の筋が見えた気がする。「まるで見知らぬ宇宙のようだ」と思った気がするが、おそらくそんなことを思うにはあまりにも幼かった。もっと単純で、あまり多くの言葉を知らない時期の特権である、第六感とも言おうか、言葉におこすにはあまりにも純粋で曖昧な感情が湧いていた気がする。でも、今その感情を思い出すことすらとても難しく、それをここで表すにしても陳腐でポエティックな言葉で捻り起こすのが精一杯だった。
1/18/2025, 4:29:26 PM