#114 だから私は一人でいたい
他人の些細な息遣いが耳につきはじめたら限界なのだ
私は部屋にこもってひとり静かに布にくるまる
思わず誰かを傷つけて、自分も傷つかないように
ある日、そんな私を「心配」という善意を着た隣人が尋ねてきた
いくらなんでもずっとひとりは寂しすぎるだろう
少しは陽に当たった方が気分が良くなるだろう
などと、用意してきた彼の思う親切を披露すると
断りもなく私のくるまる布を剥ぎ取ろうとしたが
その瞬間、抑えていた「私」が出てしまい
彼に言葉の牙を剥いた
全力で。
彼の着ていた「善意」があっという間に「憎悪」に変わる
人の親切をなんだと思ってるんだ変人!
彼は勇んで着てきた一張羅の「善意」を剥ぎ取られたことに腹を立て出ていってしまった。
静かになった部屋で私はまた布にくるまり
牙を剥いてしまった「私」を再びなだめながら
ため息をつく
あぁ、だから、一人でいたいのに...
...
お題「だから一人でいたい」
8/1/2023, 9:56:03 AM