一緒にプラネタリウムへ行こうと年に何度もせがまれるので、いつのまにか県内はおろか、地方一帯にある科学館や天文台の情報にずいぶん詳しくなってしまった。
ぼく自身は別に宇宙にも星にもあまり興味がないから途中でたいてい居眠りしてしまうんだけど、彼はちっとも怒ったりせずに上映が終わるまでいつもそのまま寝かせておいてくれる。
優しさじゃなくて、ぼくの顔を見るよりもドームに張り付いた満天の星の姿を見るのによっぽど忙しいから。
ある夜、空から突然降ってきた彼は、星の子供。
どの星座から振り落とされて地球へやって来たのか分からなくなっちゃって、ぼくの家に居候しながら帰り道を探し続けてもう2年になる。
淡く、静かに、光の波動が脈打つ小さな輝石。
雨や曇りで星の見えない夜が続くと「さみしくて身体が砕けてしまいそうだ」と机の隅でしくしく泣いている。月明かりが闇を照らす夜にも「この小さな身体があの光に溶けて消えてしまう」と嘆いて拗ねてしまう。
だから彼の機嫌をなぐさめるため、本物の星ではなくともせめて家族達の面影を思い出せるようにと、ぼくは星の子供と一緒にあちこちへ出掛け、小さな屋根の下で宇宙の似姿を鑑賞する。
はやく元の居場所が見つかればいい。
夜な夜な彼の嘆きを聞いていれば、もう諦めてこのまま地球に居ればいいなんてこと言える人間なんて一人だっていないはずだよ。ぼくだって、彼が笑って光を振りまく姿をみたい。
いつか君が空に戻ったら、きっと毎晩、ぼくの家の上でピカピカと輝いてくれやしないか。それくらいの願いは引き受けてくれるんじゃないかと思ってる。
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星
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所感:
静かに行き来する情がある。
3/12/2025, 10:19:11 AM