通りすがりの一般人

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【手紙の旅路】

インクに羽ペンを浸ける。

少し模様の入った年季を感じる紙に、時おり口にペンを当てながら、言葉を考えて綴っていく。

30分程して書き終えると、男は、丁寧に手紙を折り畳んで用意していた新品の淡い空色の封筒に入れた。

家を出て、町の郵便屋に向かい、配達人に一言声をかけて手紙を託す。

配達人に受け取られた1通の手紙はやがて町を出て、山を越えた。

山を乗り越えた先で、なんと船に乗って海路に出た。

無事に海を渡りきり、再び陸に上がる。

この手紙は、一体何処に行くんだろう?

また山を1つ...2つ...3つと乗り越えていく。

手紙が無事に届けられた時には、明るかった空は、もう真っ暗で夜遅かった。

手紙を受け取ったのは年老いた男だった。

手紙を受け取った男は配達人に一言礼を告げ、家の中に戻った。

暖炉の前に座り、暖かい火に当てられながら淡い空色の封筒をレターナイフで切り、中の手紙を手に取る。

手紙を開くと、男にとって懐かしい字が現れ、思わず顔がほころんだ。

『拝啓、先生お元気ですか?
覚えているでしょうか?先生の1番弟子の___です。
僕は___。』



「...おやおや、そこの君、すまないな」
「この手紙は私の弟子からだ、1人で読ませておくれ...」


お題「手紙の行方」完

2/18/2025, 11:45:41 AM