よい

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思い出さないで欲しい。
思い出される度忘れられるということが嫌なの。
でも、思い出して欲しい。
すっかり忘れたあとに、穏やかな朝の行きつけのカフェテリアとかでね。
どうしようもない生の軌跡に君が心を動かしてくれたなら、私にも意味があったのかなって思えるよ。

死の中に廃棄された命が春を呼んで、芽吹く盛んな小さき者が世界に彩りを与える。

俺は無になってから、無の中の底なき深みに、有ることの豊穣さを見つけた。
ここには美しい「花」があるんだ。
でも「花」の美しさというものはない。
ぜんぶ、すべてが統一された世界で、俺は君の笑顔を思い浮かべる。
後にも先にも唯一一回限りという出来事が、どんなに俺の不安定な生命に繋がっているかを思い知らされた。
そこには空虚じゃなくて、君が「ある」んだ。
「ある」が充満しすぎて窒息しそうなんだ。
夢から覚めた朝に「ある」はずのものがないという静けさがうるさい。
いない君が毎日そっと触れてくるんだ。それが恐怖でたまらなくて、いないという事実に吐き気がして、もうぐちゃぐちゃだ。
君と過ごした全ての喜びが永遠を愛して、およそ生あるものの見出されるところに「ある」。

ああ、うるさい。

.大好きな君に

3/4/2024, 2:34:19 PM