安達 リョウ

Open App

空を見上げて心に浮かんだこと(二人で溶ける)


「唐揚げ」
「恐竜?」
「綿あめ」
「うーん風船」
「スイカ」
「………」

空に浮かぶ雲の形、何に見える?

学校からの帰り道、空を見上げてわたしは隣を歩く彼に何気に問いかける。
遠くに入道雲、近くに点々と散らばるはぐれ雲。

「食べるものばっかりじゃん。お腹空いてる?」
「もう昼前だっての。そりゃ減ってるよ、育ち盛りの男子高校生だし」

真夏の課外授業は暑さとの勝負でもある。
教室へ入りさえすれば極楽以上の寒さ対策まで考える快適空間を満喫できるものの、一歩でも外に出てみればあら不思議、流れる汗に干からびてしまわないかと揺らぐ景色に辟易してしまう。

「帰ったらコーヒーフロート飲みたい」
「いいねえ。冷えた部屋で寝転びたいね」
「………一緒に飲む?」
「え」

蝉の音が一段とけたたましくなる。
―――一緒に? 今一緒って言わなかったか。

「英語教えて? 得意だったよね、確か」
「………。コーヒーフロートが報酬?」
「そ。特製のとびきり美味しいの作るから、お願い」
………両手を合わせられて拝まれては、受けないわけにはいくまいて。

「しゃあねーなあ」
「やった! 期待してます、全国模試二桁の頭脳の威力」
「あのね、教える力とは別モノだから。呑み込む読解力、吸収力に期待大」
「ええーーー」

―――そう不満そうな顔するなって。
口実が勉学と固い肩書だとしても、こちとら心弾ませてんのよ。

「ねー見て、飛行機雲! どこ行くんだろ、わたしも乗りたい」

空を仰ぐ彼女に、彼もおー、ときつい陽射しを遮りながら視線で雲を追いかける。
………高校最後の夏、色っぽい出来事なんざ皆無なんだろうけども。こうして二人で真夏の空の色を眺めるのも悪かないと思う。

俺はほんの少し自分より前に出た彼女の頭上越しに、その雲を掴もうと手を伸ばした。


END.



♡1000越え、ありがとうございます✨
皆様の♡に大感謝です。
投稿時間まちまちですが、目指せ年内お題コンプリ!で頑張ります🎆

7/17/2024, 6:57:15 AM