ミミッキュ

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"木枯らし"

 早朝のいつもの散歩道。今日はよく晴れていて気持ちの良い朝だ。
──けど、こんな晴れてると午後の天気が心配だ……。
「帰ったら午後の天気見なきゃな……」
「みゃ」
 手袋を着けた手でハナの頭を撫でる。気持ち良さそうに喉を鳴らしながら擦り寄ってきた。ハナが動く度に後頭部の毛が、シャツの襟から出ている肌を撫でて少しくすぐったい。
 すると急に、強い向かい風が吹いてきた。風の影響で木の枝が揺れ、乗っていた雪が音を立てながら落ちる。
「……っ!」
 その音と、首元を素早く撫でていった刺すように冷たい北風に肩を跳ねらせて身を震わせる。
 『木枯らし』によく似た強い風。木枯らしは、晩秋から初冬にかけて吹く北よりの(やや)強い風。それによく似た北風が吹いてきたのだ。そんな北風に、ジャンパーの中にいたハナも相当堪えたようで、中に潜って丸まっている。
「今日はとっとと帰ろう、さっさと帰ろう」
 早口で言うと、足の動きがいつもの二倍早くなる。踏みしめる度に自重──とハナの重さ──で雪が圧縮される、ぎゅ、という音が鼓膜を揺らした。

1/17/2024, 11:35:04 AM