光輝け、暗闇で
「一筋の、光輝け、暗闇で、間違う人が、増えないように」
クラスで誰とつるんでいるところも見たことのない物静かなあの子が書いた短歌が入選した。中学校にもなってなにかの啓発の短歌を書く授業なんて面白みがないと「いじめダメ」みたいな適当な31音を殴り書きして提出したあの日。部活に行こうと教室を飛び出そうとしたその時、通路側の一番後ろに座るその子が誰よりも遅く丁寧に文字を連ねていたのを見た。一瞬しか見えなかった、いつも長袖を好むその子の腕の跡は、腹減ったで埋まっていた自分の思考を停止させるくらいには衝撃的だった。特に何か言葉をかけるでもなく友人に背中を押されて部活に向かった日から3ヶ月ほど経っただろうか。その子は学校に来なくなった。心配する人も不審に思う人も誰もいなかった。自分も、楽しい日常の中でぬくぬくと暮らし、その子が間違っていないといいなと思考の端で考えるだけ。ああ、なんて無責任なんだろうと思った。どうしたらいいかはわからなかったが、最終的には馬鹿らしい一つのアイデアが浮かんだ。こんなに光に溢れた自分の生活から光を分けてあげたい。自分が光にならせてほしい。
そこから、彼女の親友として結婚式で手紙を読むまで15年もかかった。結局自分が光になれたかはまだ聞けていない。
5/15/2025, 10:16:59 AM