『透明』
思いの丈を言葉にすることで勝手に涙が出てくるとは思わなかった。好きだと告白された方は言葉に驚いた上に目の前で泣かれておろおろと困っていたけれど、そろそろと私に近づくと小さく返事をくれた。滲む視界から相手の目元にきらりと光る雫が見える。頬を伝った涙は透明で美しく、顔をべしょべしょにして泣くこちらとの対比がおかしかった。
「なんで笑ってるの」
「なんでそんなにきれいに泣けるの」
ハンカチを持っていない私たちはそろそろと近づいて抱き合うと、互いの肩口に目元を寄せた。互いの涙の匂いが感じられるかのようだった。
5/22/2024, 3:42:08 AM