『大好き』
友人に誘われた飲み会で偶然出会った彼は、同じ大学で同い年。一目惚れ同然から始まった恋は、少し私を積極的にさせた。何とか彼との距離を縮めたい。料理は不得意だけれど、まずは彼の胃袋を掴むのはどうだろう。
そこで考えついたのが、彼の大好きなチャーハンを極めることだった。
「だから、それを俺に教えろと?」
バイト先の店長にお願いします!と頭を下げる。
「高校生の頃から働いて貰ってる咲ちゃんの頼みは断われないなぁ」
店長はそう言って笑ったが修行は泣くほど厳しかった。
「ダメだ!もう一回!」
出来無いと容赦なく罵声が飛ぶ。中々上達しない私だが店長は辛抱強く教えてくれた。家で作っては味見をお願いし、バイト終わりに店でまた作る。
よこしまな考えから始めたチャーハン修行。だが今はもう違う。目指すは昨日の己を少しでも越えること。
そして1日も早く「うまい!」と店長に言って貰える
絶品チャーハンが作れるようになることだ。
3/19/2025, 9:43:04 AM