汚水藻野

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遠くで雷が鳴る。
近く無いからまだいいものの、遠いからと言って油断しない。これ大事。

俺は自分の寮部屋を出て、別の部屋をノックした。

「上鳴いるー?」

はーい、と呑気な声でドアを開けてくれた主に対し、

「雷だからさー」

と言って部屋に入れてもらった。
雷の日には、こうして上鳴の部屋へ行く。
なんか「かみなり」ばかり言っていて自分でも思う、上鳴という苗字は雷の日と合わせるとすごく気持ち悪い。

「何でお前雷んとき毎回こっち来んだよ」
「だって上鳴なら雷吸収できそうじゃん。できずに放電されたとしてもお前は死なないじゃん」
「くっそ、納得できてしまうこの個性が辛い」

まあほぼ100%「安全地帯」だから、というのが理由だ。
本当に死なないから怖い。

でもアホ面が面白いから本当に上鳴に雷が当たるのを期待して見に来ちゃう。ごめんな。

「……うわー、台風12号だってよ」
「やばいよなーそれ」

成績はあまりよろしくないがちゃんとニュースは見ているあたり、偏差値70超えは伊達じゃない。さすがだ。



「てかさぁお前あのプリントやった?英語の」
「見せねーぞ」
「見ねーよ」

今日もどこかで雨が降り、
今日もどこかで雷が鳴る。



2025.8.23.「遠雷」


なんか適当に書いてたら上鳴とセロハンが出て来た()。
上鳴の個性って電気を纏うだけなんで吸収はしないんすよね多分。でもなんか安全地帯っぽく見える。不思議。
しかしまあ本日のお題は米津玄師さんの楽曲にありそうなお題でございますね。

8/23/2025, 6:09:03 PM