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春風とともに:



心が不安定になっているのを感じる。

意識していないと呼吸が浅くなるし、音や文字、映像などの情報に囲まれていないと思考の隙間に良くない考えが浮かんできてしまう。

こうなるともう動けない。立ち上がることもできず、気分を変えるべきだと思っても、黒いもので占拠された思考は制御を取り戻すのが困難だ。

嫌な考えが、言葉が、脳に刻まれていく。

それは本来些末なものだったのか、それとも水面下の氷山が想像よりずっと大きかったのか、あるいは長らく抱えていたせいで重さに耐えかねているのか、今の自分には判断できない。どれも有り得るパターンだ。

深呼吸。肺に酸素が届ききらない。
汗が滲む。いや涙か?分からない。
指先が冷たい。耳鳴りがする。恐ろしい。

もう一度ふかく、ふかく息を吸う。縮こまった肺を無理矢理に押し拡げて咳き込んだ。その合間の息継ぎに、花のにおいがした。

ふと見れば窓が少し開いている。そんなことにさえ気が付かなかった。切り取られた空は明るく、どこまでも青い。


そうか、春なのか。


安堵か、感動か、絶望か。
分からないけれど、あれだけ苦しかった胸がどうしようもなくからっぽになった。

3/30/2025, 1:46:58 PM