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クリスマスの過ごし方


『クリスマスの過ごし方』そう書かれた本を手に取った少女は数ページほど読んで、棚へと戻した。
そのまま図書館を出て、雪が降る街の中を走って、彼女の帰る場所である教会へと向かう。
街の外れにあるその教会は立派だが、所々に年期を感じさせる。少し重たい木でできたその古い扉を開けて、少女は中に入った。
上着についた雪を払いながら、少女はそこにいた女性に声をかける。
「……ねぇ、シスター。クリスマスってどうやって過ごすの」
突然のその質問にシスターは少しだけ目を丸くさせて、おかえり、と少女を歓迎した。
「そうねぇ、家族で過ごすことが多いんじゃない?」
「……じゃあ、家族がいない私はクリスマスを過ごせない?」
「そんなことないわよ。家族以外にも大切な人と過ごしたり、友だちと過ごしたりする人もいるし」
「でも、大切な人も友だちもいない。そんな人はどうすればいいの」
「別に一人で過ごしたっていいのよ。どう過ごすかなんて決まってないんだから」
「……でも、本には家族と過ごす日って書いてあった」
「誰かが書いた言葉なだけでしょう? 気にしなくていい。それに私とあなたで過ごせばいいじゃない」
「いいの? 家族じゃないのに?」
「いいでしょ。一緒に住んでるんだし、家族みたいなもんよ」
そう言ったシスターは右足を引きずりながら歩く。前の戦争で負傷した足は治ることなく一生そのままだと言われていた。
同じように前の戦争に参加していた少女はそれを見ながら、視線を伏せるように顔を下に向けて思う。
「お祝いなんて、してもいいのかな。みんな死んじゃったのに、笑って過ごすなんてことをしてもいいのかな」
「……そんなこと言ったら、私だって罪のない命をたくさん奪ってきたよ。それでもさ、残った私たちができるのは精一杯生きることだよ。お祝いするのも、笑うのも、泣くのも、怒るのも。ぜーんぶ生き残った私たちにしかできない。だから、そんなこと考えないで精一杯今を生きればいいんだよ」
シスターからの答えに少女はゆっくりと顔をあげる。不安に揺れる瞳を見てシスターは内緒話をするように小さな声でこう言った。
「それに、クリスマスは何てことない日に名前をつけた、ただそれだけよ」
え、と驚くように目を開いた少女にシスターは吹き出すように笑った。その笑い声につられるように少女の頬がわずかに緩んだ。

12/25/2022, 1:39:47 PM