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「私とあなたじゃ住む世界が違う 第四十九話」

志那達がマンションに来てから数日後、由里は章司の部屋に遊びに行こうとしていました。
「マンションの住人が一気に増えて、ますます楽しくなって来たなー」
由里がマンションの廊下を歩いていると、庭の掃除をしている志那を発見しました。
「志那は偉いねー。私はココに来てから掃除なんて自分の住居スペース以外しないもん」
「あ!由里だ。ちょっと、ちょっとー!」
「なぁーにー?」
「聞いてよー!ココの管理人、すごく意地悪で私に次々と雑用押し付けて来んのよ?あり得なくない?」
「えー、そうなんだ?でも、管理人はすごく良い人だから、そんなには押し付けては来ない筈だけど?」
由里は、志那はそんなに管理人に気に入られているのかなと思いました。
「志那ー、頑張れー!後でご褒美があるよー!」
「ご褒美なんて、もらった事無いよー!」
由里は、章司の部屋に行ってしまいました。
「章司、遊びに来たよー!」
「由里、来ましたね」
由里は、章司の部屋に入りました。
「ココに来てから、毎日遊び放題!勉強なんかしなくても、誰からも怒られない。サイコーじゃん!」
「たくさんの芸能人と同じ土地に暮らせるなんて、凄い事だし、現実世界じゃ有り得ない事ですよ!」
「推しに会えると良いんだけどな…推しが芸能人で良かったかも」
「芸能人だったら、スペックが高いってお墨付きがありますからね」
「志那は可哀想だねー。配信者なんて顔が見えないじゃん。実際はブサイクかも知れないんだし」
「由里は誰を応援していますか?」
「私は、あべの男子の斉木優人君!」
「僕は、曽池由衣花ですね」
二人は、嬉しそうに話していました。

「偶然にも、斉木君が窓の外の道を歩いていたら良いのにな…」
「そんな偶然が起きれば良いんですけどね。三次元国なんて、住人の大半は一般人ですから…」
章司は、窓の外を見ました。すると、並木道を歩いている優人と由衣花を発見しました。
「由里、大変です!斉木優人と由衣花ちゃんが歩いています!」
「ンな、まったまた……ウソー!!」
優人と由衣花は、二人並んで歩いていました。
「二人って、どう言う関係なの?!恋人?」
「実際、会って確かめないと…!」
「飛行術、使う?」
「使いましょう!ファンが居ても、飛行術の練習と言えば許してくれる筈です!」
推しに会えるかも知れないと言う状況に、二人は興奮していました。
「えーい、ココは空想の世界!ファンのしきたり守らなくても許される!」
「いざ、飛行術!」
窓を開けた二人は外へ飛び降りて、飛行術を使って芸能人二人の所へ飛んで行きました。
「…あ、あなたは…」
「由衣花ちゃん、僕はファンの田宮章司です!」
「斉木君、私はファンの星川由里です!」

「…え、えーと…ファンの子?」
「はい!そうです!いきなり現れて、すみませんでした!」
「お二人って、恋人同士なのでしょうか…?」
章司は、気になっていた事を優人と由衣花に聞きました。
「あの…違います」
「僕達、友人同士なんだ」
「良かったー!」
由里と章司は、二人が恋人関係で無い事を知り、安堵しました。
「こんな所で立ち話も難だから…カフェに行きませんか?」
「良いんですか…?!」
「ケーキが美味しい店、教えてあげるよ」
「本当ですか?!ありがとうございます!」
四人は、近くにある有名なカフェに行きました。
「うわぁ…雑誌で見たパンケーキ!」
「まさに、女性の中の女性に合うお店です!由衣花さんのような!」
「女性の中の女性…」
「まさに、由衣花さんの為にある言葉です!」
「私、小さかった頃は男の子になりたかったって言ったらびっくりする?」
章司は、時が止まったかのように硬直しました。
「でもね、女子高生の人に『男の子になってはいけません』って言われて、女の子らしく生きるように心がけたの。性を変えると不幸な人生になるって念押しされちゃって…」
「その道、選んで正解ですよ!」
章司は、熱い男になっていました。

由里と章司は、それぞれの推しに会えた事で、一生分の運を使ったんじゃないかと不安になる間も無く有頂天でした。
「この世の春って、こう言う事?」

11/11/2022, 10:33:00 AM