私の家のベランダからは、大きな山が見える。
春になると、山の頂上だけに桜が咲くので、山のてっぺんだけ桃色に染まる。
夏になると、青々とした葉が沢山茂り、遠くからみるとまるで、ふわふわとしたまりものようにみえる。
秋になると、真っ赤になった紅葉や、茶色くなった木、綺麗な黄色の銀杏など、暖色の山になる。
冬になると、枝が丸見えになった木や、深緑色の葉が目立ち、寒色の山になる。
四季が移り変わるたび、山はさまざまな性格に染まる。
夕方、学校から帰った私は、ふと山を見て驚いた。
春だというのに、山は真っ赤に染まっていたのだ。
よく見てみると、後ろにはまん丸の大きな太陽が、存在を激しく主張するように、神々しく光を放っていた。
太陽に照らされているのは、山だけではなかった。
空も、街も、道も、さらには私も、いつのまにか真っ赤に染まっていた。
私は、全てを自分色に染めている太陽が、何故か少し自慢げに笑っているように見えた。
誇り高く、自信満々に光を放ち、周りすら変えてしまう。
そんな人間が、私は羨ましかった。
どこに行っても、カリスマ性溢れる天才はいるものだ。
そんな天才と自分を比べてしまう私だが、さすがに太陽と自分を比べることはできない。
だからだろうか。
太陽の光に当たっていると、心穏やかになる。
私は初めて、嫉妬ではなく憧れを抱いた。
4/7/2024, 12:05:07 PM