NoName

Open App

『ひなまつり』

幼少の私にとって、このお祭りは日常における季節を感じるイベント程度のものだった。

お雛様の飾り付けするよ、の母の言葉で思い出し、
一対のお人形と飾り付けを済ませる。
気づけば祖母がお人形たちの横に桃の花を添えていたりして。
そして、お昼か夕飯にはちらし寿司が振る舞われ、
それを食べる。
時がくれば、おひなさまたちは梱包され、再び段ボールの中に収まる。
段ボールは滅多に開かない押し入れへ。

なんてことのない一連の出来事だ。
町がそれで賑やかになるわけでもなく、
大きな花火が上がることもない。
一家の中で起こる季節のイベント。
お祭りというにはあまりにも静かすぎる。

それでも毎年恒例イベントとして定着しているのが
不思議なものだった。
我が家の決して広くはないスペースが毎年この時期
おひなさまに占領されるわけだし。
幼い私は人型のお人形たちが、いつかこちらをその目で捉えてくるのだと怯えたりして。
そもそも、こんな盛大な結婚式なんて今時誰もしていないのではないかと思うのだけれど。
まあ、いっか。
そういえば、ひなあられを食べ忘れていたんだっけ。

———————-
たぶん、こういう伝統行事は歴史を後世に伝えていく一手段になり得るんだろうなと考えたり。

3/4/2024, 4:10:15 AM