はた織

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 多分私の未来にも文学を捨てる道があるだろう。
 それこそ、検閲が厳しく、表現も制限された戦前の時代に生きていたら、果たして文学を好きでいられるのかと考えてしまう。
 つい好きすぎて辛くなって捨てざるを得ないほどに苦しくなり、自身も時の政府の権力によって、文学を検閲し表現を制限して、文章全てを××××××××××××に書き換えてしまうかもしれない。いっそのこと、華氏451度の炎に熱してしまえば、苦しみから解放されて気持ちが良いだろう。
 だが、文学とは国の大業にして永久不滅の存在。愛憎の火に何度焚べても焚べても不死鳥の如くよみがえり、そのペンの如く鋭き嘴に心臓を射抜かれてしまうだろう。そうしてまた憎悪の業火が不死鳥に火種を与えるのだ。永遠の苦痛である。
 文学青年だった彼の未来は、生きる術を失った私のIFルートであり、私の中に潜む可能性でもある。悪役は自身に秘められた未来の記憶なのだなと腑に落ちた。
               (250212 未来の記憶)

2/12/2025, 12:52:45 PM