カラツネ

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「涙の理由」

私は砂漠のゴーレム。
城に住んでいるご主人様を護るため、
土を固めて作られた番人。

そんな私にご主人様はいつも優しくしてくれた。
どこからか花を摘んでは私にプレゼントしてくれた。

それでも私は土で作られたゴーレム。
それの良さがわからない。

そんなことを思いながら、
何十年もの時をご主人様と過ごした。

ある日、ご主人様はいつもに増して
たくさんの花束を私にくれた。
私は何か良いことでもあったのだろうと思った。
しかし、その日以来、ご主人様は私のところへ来なくなった。

何故だろう?
ご主人様を怒らせてしまったのだろうか。
たくさんのプレゼントをもらったのに、
私が嬉しい顔ひとつしなかったから。

しかし、考えても、考えてもわからない。
なぜなら私はゴーレムだから。

それからどれくらいの時が経っただろうか?
あるとき、1人の男がやってきた。

「そこの男よ、私は砂漠の番人ゴーレムだ。このさきに進もうと言うなら、城の主人を護るため、お前を捻りつぶすぞ」

男は言った。
「この先の主人なら、とうの昔に亡くなっているよ」

私は男が言っている意味がわからなかった。
なぜならゴーレムだから。

だから私は男に尋ねることにした。
「我が主人が亡くなるとはどういうことか?私は何百年と形がある。何百年と生きている。亡くなるとはどういうことか?」

男は最初、不思議そうな顔をしていたが、やがて何かを察したように答えてくれた。
「君の足元にある枯れた花を見てごらん。命が亡くなるとはそういうことだ」

私はそこでようやくわかった。
ご主人様は怒っていたのではない。もう命が短く、私の前に顔を出せなくなるから、せめて私が寂しくならないように、たくさんのプレゼントをくれたのだと。そして、ご主人様は足元の枯れた花のようになってしまったのだと。

そのとき私の頬に水が流れた。
「おかしいな、今日は雨が降ってるわけでもないのに、何故頬に水が流れるんだ」

私は男に尋ねた。
「雨が降ってないのに頬に水が流れるのは何故だ」

男は優しく答えてくれた。
「それは雨じゃなくて涙だよ」

私は男の言ってる意味がわからなかった。
なぜなら私はゴーレムだから。

10/10/2024, 11:25:49 PM