どこにも行かないで:
まさに今、口をついて出ようとした言葉を噛み潰して飲み込む。
何もないような顔で笑ってみせる。
今しがた飲み込んだ言葉の切っ先が喉の裏を、腹の奥底を刺し貫いてしまいそうだ。
あなたは優しいから、この痛みに気が付けばきっと足を止めてくれる。ここへ踵を返してくれる。
だから気取られるわけにはいかない。これが今生の別れでもあるまいに。否、絶対とは言えないけれど。
「それじゃあ、またね」
見えない未来に希望の橋をかける約束を、どうか信じさせてほしい。
6/22/2025, 10:25:49 AM