「貴女の脳を食べたい」
人間は自分が得たい能力の部位を食せば、その力を得られると信じてきた。
SNSではよく神絵師の腕を欲する声が上がる。
画力を上げたくて、腕を食べるのであれば、小説家ならば、脳を食べればよい、という思考になるとは至極真っ当な流れだと思う。
だから、
「貴女の脳を食べたい」
二度繰り返した私の言葉に彼女は笑う。
「私の脳なんて食べたら人間らしく生きることは出来ないよ。私、生活力ないし」
「それでもかまわない」
私は、私の物語を思い通りに書き写せるのならそれでかまわない。
彼女は聖母のように微笑みをたたえ、言う。
「いいよ、私が死んだら脳は貴女にあげる」
7/14/2024, 3:26:07 AM