「前が見えん...」
かけている眼鏡のレンズは水滴で溺れるように濡れ、前が見えにくくなっている。雨水は眼鏡だけを濡らしているはずもなく、私の体に強く雫を打ち付けている。
朝までは晴れていたのに。
「明日は風邪をひくかな」
少しだけ憂鬱な想像をして、私は家へと走り出した。
風を切る、というより雨を切るように、とにかく走った。
曇る視界などお構い無しにどんどんと足は進む。どうやら私の足は、もう止まることを知らないようだ。
こんな風に少しだけ憂鬱なことを想像したりして急に走り出す。ああ、ずっとそんな世界が続いていればいいのに。
<雨に佇む>
8/28/2024, 8:37:40 AM