小音葉

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夕暮れに滲む彗星の瞳
何よりも輝かしく、透き通る聡明な色
日陰に慣れたこの目には眩しかったけれど
火傷しそうな手のひらの熱が心地良かった

お前に世界は暗すぎる
いつかその目が曇る時、指先から心まで凍り付く瞬間を
そんな日が来なければ良いと思っていた

今、お前が突き付ける刃
鈍く冷たいばかりの停滞した光
大粒の雨に降られた水面のように
青が溶けて揺らめいて、お前自身を刺し貫いている
震える手を血が滴り、軋む骨が悲鳴を上げて
何故気付かない
凶刃を握る白くなった手に
振り翳す凶器と刃毀れに
どうせなら、せめてこの身を
宙を奔るお前の代わりに墜ちてしまいたかった

こんな私を優しいという
お前に世界は残酷すぎた
今からでも代われるのなら、取り戻す術があるのなら
差し出す手はただ空を切る
黒く濁って開いた心はやがて私を呑み込み
遠からず星をも喰らうだろう
怖くはない、今更何を恐れようか
ああ、けれど、そうだ
真夏の太陽にも似たお前の目だけは忘れたくないな

暗い暗い、暗いばかりの世界に
再びお前は生まれるだろうか
その光でまた私を焼いてくれるか

信号が変わる
呑気な音を聞き流し、色の無い世界を歩き出す
隠した傷を庇いながら、お前を忘れた空の下

(もしも君が)

6/14/2025, 12:22:12 PM