Open App

【色とりどり】

 穏やかな陽光に照らされて、露がきらきらと輝いている。昨朝に降った雪によって真っ白に染められた村は、一日経ってすっかりその様相を変化させていた。昨日まで雪に覆われていた色とりどりの花々が、陽の光を浴びながら緩やかに揺れている。
 一面無機質な色だった山々も、今は点々と色付いている。幼かった頃はあの山を、野原を、日が暮れるまで駆け回ったものだ。そしてその隣では、気心知れた幼馴染が息を切らしながら無邪気に笑っている。それももう、今は遠い昔の記憶になってしまったけれど。
 
『雪、好きなんだね』

 見渡す限り見事な雪景色になった野原を見て目を輝かせる俺に、いつだか幼馴染がそう言ってきたことがあった。その時は、迷うことなく頷いた。でも今は違う。雪は嫌いだ。はらはらと舞う白を見る度、思い出すのはもう見ることの叶わない横顔ばかりだから。遠く離れた街に越したっきり、会えなくなった彼女のことが、ひどく恋しくなってしまうから。だから、雪は、嫌いだ。

 一つ、大きく息を吐く。宙にぼんやりと浮かんだ白から目を逸らして、代わりに色とりどりの花々を見下ろした。


1/8/2026, 5:01:18 PM