かさ

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※BL描写




 カーテンの合間から漏れる陽の光で目覚める朝は、この上なく心地よいものだった。キングサイズのベットは、寝返りをゆったりと受け止めてくれる。すやすやと穏やかな寝顔を見せる彼を起こさずに済んだ。
 額に散らばった前髪を整えるようにして、指先でそっと撫でる。彼は特に反応を見せることなく寝息を立てている。どんな夢見てるのかな。

 彼を起こさぬよう、初めは慎重で控えめな手つきだったものの、彼の眠りが深いことに気がついてからは段々と大胆な動きになっていた。体を寄せて、腹のあたりに腕を回す。首元に落ち着いて呼吸すると、大好きな彼の匂いが胸いっぱいに広がった。
 その匂いに安心したせいか、またとろとろと眠気に包まれる。まだ時刻は早い。俺はその眠気に抗うこともなく瞼を下ろした。


 どのくらい経ったのか、ぼうっと意識が持ち上がる。体は動かす気になれなくて、微睡みに浸っていると、隣で寝返りをうつ気配がした。寝起きのせいでぽかぽかした体温が腕に当たる。
 優しく優しく、額を撫でられる。気持ちがふわふわして、心地よくて、されるがままになっていた。手つきから愛情が伝わる。彼の手の中で、心が小鳥みたいにふるふる震えるような気さえした。
 頬に柔らかなものが何度も触れて、甘やかな慈愛に全身がとろけてしまいそうな気分だった。好き、と言葉がようやく胸に浮かんで、そっと瞼を開ける。

「おはよ」

 掠れた声に、彼が微笑んでくれた。

10/7/2025, 6:15:20 PM