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ココロオドル


見た目は人間と何一つ変わらないアンドロイドだった。スムーズな動き、文脈をとられた正しい受け答え、すべてが完璧だった。
ただ一つ、感情というものを除いて。
嬉しい、楽しい、悲しい、さびしい、怒り、など言葉にするのは簡単でも、それに伴った表情が出来ていても、心というものがないから。本当の意味で感情を出すことは出来ず、膨大なデータから導き出された共感の言葉も、本当は理解できてはいなかった。
だから、博士は研究に研究を重ねた。寝る間も惜しんで開発をし続け、作り続けた。博士の助手をするその女性もアンドロイドだった。アンドロイドは疲れることなく、淡々と作業をしていたが、博士はどんどんと疲労がたまっていた。
「休まれては、どうですか」
何度かアンドロイドから声を掛けられるが、博士は気にせず続けた。
そんなある日、博士は倒れた。疲労によるものだとわかっていた。それでも作り上げなくては、と使命感にかられていた。
博士を運び終えたアンドロイドは、博士が目を覚ますまでそばにいた。博士が目を覚ますと、女性の瞳から涙がこぼれる。
それを見た博士は少し驚いた後に嬉しそうに微笑んだ。不思議そうにする女性は博士は優しくこう言った。
「ああ、ようやく君にも心が芽生えたか」

10/9/2023, 1:52:03 PM