6/3「失恋」
「恋を失う」と書いて失恋と言うけど、結局、君を失ってもこの恋は失われなかった。
6/2「正直」
人は正直であるべきだ。己の悪を隠そうとしてはならない。そう、桜の木を切ったことを告白したとかいう、えーと、誰だっけ…。まあ、とにかく。
「昼にホットケーキ作ったけど美味しそうだったので一人で全部食べました」
「言わなくていいことは言わなくていいです」
「ちなみにワシントンの桜の木の話って作り話らしいよ」
「そうなの?!」
6/1「梅雨」
空はどんより、心もどんより。うどんより蕎麦が好きだ。じゃなくて。
「んあ〜〜〜〜」
布団をむぎゅっと抱きしめて左右に転がる。憂鬱。ひたすら憂鬱。誰だよ「止まない雨はない」って言った奴。今すぐ止まなきゃ意味ないのよ。
とか言ってたら、不意に雨音が止んだ。窓を見上げる。
雲間から光が差し込んでいた。天使の梯子とか何とか言うやつだ。もしかして神様が聞いてた?と思う程のタイミングの良さだ。
神様とか天使とか雷様とかも、息抜きが必要なんだろう。多分ね。
5/31「無垢」
「おいしい!」
あむあむと梨をぱくつく小娘を、片頬杖ついて眺める。やがて、
「…なくなっちゃった」
「そりゃそうさ、食えばなくなる」
しょんぼりする小娘。やれやれ、誰だよこんな小娘拾ってきたのは。
「もう一個買ってやるから、そんな顔すんな」
―――アタシだったか。
5/30「終わりなき旅」
「わしと共にこの大陸を支配しようではないか。その際にはお前に大陸の半分をくれてやろう」
そう誘ってきた魔王と共に、大陸を永久追放された俺は。
「全く、王どもに裏切られるとは迂闊な勇者よ」
「いやー、荷物に遠隔聞き耳魔法仕掛けられてるなんて思わないじゃん…」
そう愚痴りながら、新たな大陸を旅している。なんだかんだ楽しい今回の旅に、終着点はとりあえず見当たらない。
5/29「『ごめんね』」
目の前には。
「いやー、ごめんね! 飲んでたら終電逃しちゃって結局3時まで飲んで歩いて帰ってきた! ごめんねごめんねェ〜!」とのたまいながら帰宅したので軽くゲンコツを食らわしてやろうと思ったら何もない床でつまずいて勢いづいた強烈な顔面パンチを食らわせてしまい床の上で大の字になっているナミコがおり。
「…………アヤさん」
「はい…」
「何か言う事あるよね…?」
「えーっと……ごめんね」
5/28「半袖」
アイツは何かあるといつも、下を向いてオレの袖を掴む。
だけど今日は半袖だ。いつも通り袖を掴もうとしたアイツの手が、戸惑ったように彷徨う。
オレはその手を軽く握ってやった。アイツは驚いて見上げてくる。だが、拒絶はされなかった。
目を潤ませたアイツは、少し顔を赤らめて笑った。
6/4/2024, 4:07:14 AM