僕の名前を呼んでくれてる気がする
煙草を片手に座ってる気がする
ヘッドホンから零れる音が懐かしかった
君との思い出は多い物では無い
だけどそれを抱えて前を向くには余りにも多かった
そしてそれに縋るには、どうしようもなく少なかった
そんな中僕が強く彼女の1部として記憶していたのは煙草だった
体に良くないから、と言い僕に背を向けて
煙草を吸う彼女の背中は僕にとって大きな壁だった
決して触れられない彼女の人生だった
そんな彼女が久し振りに会いたいと言ったあの夜
彼女はどこかいつもと違う、きっとお酒が入っていた
いつもの公園で僕達は横に座った
最近はどう、なんて軽い世間話をして
彼女は煙草に火を付けた
あの瞬間灯された彼女の横顔程綺麗な物はこの世に無いだろう
いつもは背を向けて吸う彼女が今日は気にしず吸い出した
煙草の煙を僕はどうしても好きにはなれなかった
それでも彼女の紫煙は嫌いにもなれなかった
纏われる君に見とれていた時
「煙草興味ある?」
「先輩が吸う煙草はいつも羨ましい」
「可愛い事言うね、けど煙草は吸う物じゃ無いよ」
「先輩に言われても説得力無いね、じゃあ何で吸い続けるの?」
そんな会話をした、彼女の答えは
「自殺行為」
そう言いながら顔を傾け微笑む彼女に僕はきっと心底惚れていた
僕が煙草を吸い出したのはその次の年だった
彼女の命日の日、同じ銘柄に火をつけた
あの日彼女がくれたライターで
「このライターをこんなに早く使うとは思って無かったよ」
もう居ない彼女に僕は話しかける
「写真を見なくたって、会話を見返さなくたって
家を出ればそこら辺に先輩との想い出が転がってるんだ」
「先輩は僕の中で生き続けている、それでも居ない貴方との
生き方も、その覚悟も未だ僕には出来ていない」
「どうして置いていったの?」
到底返事が返ってくる事は無い
でもその瞬間懐かしい匂いがした、彼女の匂いがした
僕の手に挟まる煙草の煙
「先輩は本当に意地悪だね」
僕はあの日懐かしい紫煙に抱かれながら独り、彼女と生きる事を決めた
君を探してこれからも想い出に火を付けようと決めた日だった
君を探して / 2025.3.15
3/14/2025, 5:51:05 PM