たやは

Open App

予感

勘も良くないし、もちろん霊感なんてないけれど、ちょっとだけ不思議なことがある。

高校生の頃から電車通学している。これから、満員電車に乗るのかと毎朝憂鬱でしかない。でも時々、本当に時々、「今日は座れそう」と思うことがあった。始発でもないし、私が乗る頃には席なんて空いていることはない。どう考えても座るのは無理だ。

〇〇線の電車が到着します。危ないですから黄色い線の内側お下がりください。

やっぱり満員。人の波に押されながら電車の中央近くまで流され仕方がなく、つり革につかまる。

ガタン。ガタン。

高校前駅までは40分だ。長い。そして、今日も押しつぶすされるほどの人だ。ああー。憂鬱。

次は〇〇駅。〇〇駅。お出口は右側です。

次の駅名が告げられた時、目の前の中年男性が立ち上がった。
え?ラッキーじゃん。
男性と私が入れ替わる形で席に座ることができた。こんな混んでいるのだ。目の前の席が空いたら高校生だって座る。座って悪いことはない。高校生だって疲れる。

それから半年が経ち、また駅で「今日座れそう」と思った。なんとなくだけど座れそう。そんな感じだ。
電車はいつも通り満員電車で、でもやっぱり私の前に座っている人が立ち上がる。
ラッキー。座れる。

あれ?
もしかして、駅で座れると思えは座れるのかな。それって凄いじゃん。明日もやってみよう〜。

次の日、ウキウキしながら「今日も座れる」と自分にいい聞かせていた。

しかし、座れなかった。
なんでよ!明日こそは座れる。絶対に座れる。毎朝、呪文ように「座れる。座れる」とつぶやく私に駅で声をかける友達はいなかった。寂しいじゃん。

「だってあんた。ブツブツ言って怖いよ〜声なんてかけられない」

本当に不思議だか、自分で念じても席座ることはできないが、フッと「座れるかも」と思ったとき、予感がした時だけ座ることができた。不思議だ。

社会人となった今も満員電車に揺られる生活を送っている。予感を感じる間隔が徐々に開き、もうほとんどない。

ちょっと寂しい気がする。また、あの予感を感じことができるだろうか

10/21/2025, 6:42:22 PM