深い闇の様な夜に煌々と輝く星を見ているとあの日を思い出す。彗星と共に現れて去っていった君との一秒間の思い出を。蝉が煩く鳴いている社会人生一年目の夏、私は夜空の中で名もなき彗星を見た。彗星を見ていると徐々に私の方に近づいていることに気づき焦って逃げようとすると彗星は消えて君だけがいた。
星の夜空から落ちてきた君はまるで本物の星の王子さまに見えた。私が呆けていると君は笑って優しく手を取ってくれた。空をかけて星空を間近で見してくれた。共に笑い合い幸せを分かち合った。ひとしきり話が終わると君はそろそろ立ち去らねばならないと言った。彗星の君が近づいた事で特殊相対性理論の時間のズレが起きて君と私だけが一秒の世界で動いたという。でもそろそろ彗星の君が去ってしまうらしい。
最後に君は言った。
「僕にも昔は名前があったんだ。けれど時が経つにつれ忘れられ誰にも知られない名もなき彗星になったんだ。100年経って僕は付喪神になった僕はそれに気づいて誰かに知って欲しかった。それが君だった。最後に君に会えてよかった。僕はもう数万年はこの地球の軌道にのることはないから」
君は寂しげに笑った。そんな君を見ていると私も寂しくなった。だから私は毎夜、星空で探す。私だけが知っている彗星の王子さまを。
この物語はフィクションです。
お題星空の下で
ここまで読んでくださってありがとうございました。
4/6/2024, 4:03:25 AM