学校の帰り道に、突然空に現れた灰色の雲。
大粒の雨粒が落ちてきて、ザー!っと一瞬で本降りになった。
私は急いで持っていた傘をさす。
最近いつ雨が降るか分からないから、毎日持ち歩いているのだ。
濡れたアスファルトから、雨の香りがする。
この香りを嗅ぐと、あの日を思い出してしまう。
お母さんが……死んだ日のことを。
十年前、お母さんは歩いて私を迎えに幼稚園へ向かう途中、車に轢かれた。
お母さんは即死で、車を運転していた人は居眠り運転をしていたらしい。
幼稚園児だった私は、お母さんが死んだことを理解するのに時間が掛かった。
だって、病院のベッドで寝ていたお母さんの顔は綺麗で、すぐに目を覚ますと思ったから。
お母さんはもう目を覚まさないと言われた私は病院を飛び出して、雨に打たれながら泣いた。
それからしばらく幼稚園に行けず、家でずっと泣いてたっけ……。
思い出している間に、私は泣いていたのか、頬に涙が通った跡がある。
雨、早く止んでほしいな……。
雨は私のことなんかお構い無く、ずっと降り続けた。
6/19/2025, 11:10:34 PM