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神様へ


神様へ
もうそろそろ会いに行ける日が近いみたいです。
神様が、いってらっしゃいと見送ってくれた日からもう随分と長い時間が過ぎました。
嬉しいことがたくさんありました。楽しいことがたくさんありました。同じくらい、悲しいことも、辛いこともたくさんありました。
忘れてしまったことも、たくさんありました。
どれもこれも振り返ってみたら、思い出として美化されて、決して悪くない、悪くない人生でした。
後悔や未練がないわけではありません。でも、それに執着しようとは思いません。
だって、こんな人生だったけれど、私はとても幸せでした。
決して褒められるような人生ではなかったけれど、ひどいこともたくさんしたし、許せないこともたくさんあったけれど、それでも生きてきてよかったと、そう思えるのです。
生まれてきてよかった、と。あなたがくれた命を、あなたがくれたこの素敵な贈り物を、こんな私にくれたことが嬉しくて。
上手く大切にはできなかったけれど、望んだ人生とは違ったけれど、思い返せばすべてが愛しく思えるのです。
ねぇ、神様。私にこの命をくれて、ありがとうございます。私に私という命を、人生をくれて。
もうそろそろです。あと少しだけ、この世界にいさせてください。ほんの少しでいいのです。せめて、最後くらい彼らの顔を見てさようならを言いたいのです。それだけが未練なのです。
だから、彼らが来るまであと数十秒だけ待っていてください。
そうしたら、私はあなたの元へ行くのですから。帰るのですから。
帰ったら、土産話をたくさん聞いてください。私は胸を張って言いましょう。
「私という人生は、とても素晴らしいものだった」と。

4/14/2023, 2:28:25 PM