ネジが外れたウサギ

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心を壊して独りぼっちになった僕は

薄暗い部屋の中で引きこもっていた。


ブルーライトが目を刺激しているのは分かっていても

画面の向こう側にいる名前の知らないバンドを

ぼーっと見続けることをやめられなかった。


楽器なんて弾いたことないし、

音痴だから歌にも自信ないから、

バンドを組んだことなんてない。

それでも彼らが見ているライブの中の風景は

想像できていると思う。


カッコいいこの日のための衣装を着て

長さはわからないけど、

苦しかった下積み時代を乗り越えて、

懸命に歌い、演奏している。

ライブに来てくれたお客さんは皆、活気付いている。

きっと彼らの目の前の風景は、

何にも変え難い宝物だろう。

でも、心のどこかで想像していたかもしれない、

今よりも小さな漠然とした夢の風景を。


僕は彼らが見ている風景をこの眼で知りたくて、

ライブに行きたいと思った。

金欠というのもあるけど、

それよりも今はまず外の世界へでなければならない。

だからはじめの一歩として

孤立者のための就労支援事業所を探そう。


夢は急がなくても逃げない。

見たい風景は、自分の目でしっかりと見届けよう。

そんなことをこのバンドは曲で教えている気がした。

4/13/2025, 5:52:18 AM