ななえ

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先生、そう出そうとした声を呑み込んだ。
先生がほかの女の先生と話をしていたから、ただの仕事の会話わかってるのになぜか2人が話してるところを見ると逃げだしたくなる。
私は、いつもは先生と話して帰るところを今日のところはまっすぐ家に帰ることにした。
家にいるのは嫌いだった。考えたくないことを考えて頭から離れなくなるから。でも、あの二人が話してるのを見るのはすごい辛かった。
去年までは、こんなことなかくて毎日幸せだったのに。どうして……。
次の日、私は最悪な気持ちのまま目が覚めた。
テレビのニュースでは高校教師が女子生徒と恋仲になって捕まったという内容が流れていた。
最近こういうのばっか。なにがだめなの?
どうして好きになったらいけないの?
だって、悩みとかを親身になって聞いてくれてあんなに優しく微笑みをかけてくれる人みんな好きになるでしょ?それがただ先生だってだけ、高校生の恋と立場が違うだけ、大人だと仕事が違うだけなのに。
どうしてこうもニュースになって責め立てられなきゃいけないの?
好きって気持ちに嘘なんかあるはずないのに。
学校につくと、先生が廊下を歩いていた。
隣にはあの女がいる。それでも、私は逃げ出さずにおはようございますと声をかけた。
逃げてばっかじゃダメだと思ったから。
「おはよう」とあの女が
「いつも早いなっ!偉いぞ!」先生に褒められて私は笑顔でそうでしょ!と答えた。
すきだよ。せんせい。
1、2限目が終わり3限目はあの女の音楽の授業だけど
先生に褒められたから気分が良かった。
音楽室につくとまだ誰もいなかった。
早く来すぎたかな?私は自分の席に腰を下ろすとさっきの先生の会話を思い出していた。
周りからどう思われてもいいすき、先生そう伝えたい。
「あら、藤本さん早いのね。」後ろから当然名前を呼ばれてびっくりした。声をかけてきたのはあの女だった。
あの女は私の席の前にすわった。
「幸せそうな顔してたけど、好きな人でも考えてたの?笑」
あの女がからかうように私に言ってきた。
「そんなんじゃありません」
私ははっきりとそう答えた。
「え〜、嘘だぁ。あれは恋してる女の子の目だったよ?」「同じクラス?笑」
きもい。なんで話しかけてくんだよ。
私はイラついた。
「違います。」私は否定した。
「そうだよねぇ、だって藤本さんは中山先生が好きだもんねぇ」あの女が気持ち悪いほど綺麗な笑顔で言ってきた。
私はびっくりしてえっと不抜けた声を出した。
なんで知ってんの。
「ち、違いますよ」と慌てて否定する。
でも、あの女は私が中山先生が好きなことを分かりきっているとでも言うような顔をしていた。
「かわいい。」そう言った時人が入っていて、話は終わった。
私は、驚きとイライラで授業は全く聞いていなかった。
なに?なんなの?なにあの余裕そうな顔。
ムカつく。大人にはなんでもお見通しとでも言いたそうな顔。ほんとに腹が立つ。
授業の終わりのチャイムがなると同時に私は音楽室をとび出した。あの女の顔を見たくなかったから。
その後の授業も、全然頭に入らなくて上の空だった。
帰り際に先生と会って話したけど上手く話せなかった。あの女にバレたなら先生にもバレてるんじゃないかって怖くなった。
家に帰って、私は自分の部屋にはいってすぐクッションを投げ飛ばした。
「あの女、まじでふざけんな!」
「ちょっと、私より早く生まれて立場が有利だからって!」
ん?有利?私は自分で言った言葉に違和感を覚えた。
有利ってなんだ?あの女の何が私より有利なんだ?
あ、そっか。本当はもう気づいてたんだ。
気づいてて気づかないふりしてたんだ。
私は目から涙がこぼれた。
知ってた。知ってたよ。先生。
あなたがあの女に向ける少し熱い、微熱のような目。
そして、あの女がその先生の思いに気づいてる
嫌な女の目。私の少しだるい微熱のような痛みも。
全部、全部知ってたんだ。
でも、だからってどうすんの。どうすればいいの。
こんなのどうしたって意味ないじゃん。
受け入れてもらえるわけない。私の好きなんか。
どうしろっての。このきもち。
私は一晩中泣いた。そして一晩中考えた。
この気持ちの行き先を。
次の日、授業が終わると私はまっすぐ先生がいつもいる職員室に向かった。
また、あの女と話していたけど私は無視して先生に声をかけた。
「せんせい、話があるんですけどいいですか?」
「え?今?」先生は都合が悪そうだったけど、私のまっすぐな目を見て「わかったよ」と言った。
生徒の話はいつもしっかり聞いてくれるんだよね。
そういう所好きだよ。
先生は、なにか相談事だと思ったのか相談室に連れてこられた。そりゃそうか。告白だなんて思わないよね。
「で、話ってのはなんだ?」いつもは笑顔なのに今は真剣な顔をしてる。
私は勇気を振り絞って言った。
「好きです。せんせい。」
先生は驚いて小さくえっと声を漏らした。
沈黙が流れた。冷静になったのか、それとも何か言わなきゃと思ったのか先生は口を開いた。
「ほんとか?」先生は戸惑ったような顔をしていた。
「ほんとです」私はまっすぐに先生をみつめた。
「そうか、でもごめん生徒とは付き合えない。」
私のおもった通りの答えが返ってきた。
まあ、そうなるよね。
「ごめんな。」先生が振られたわけじゃないのに泣きながらそういった。
私の変わりに泣いてくれてるんだよね。
先生の前じゃ泣けないの知ってるから。
でも、今はその優しさダメだよ。
そういう優しいところが好きなんだもん。
人のためにこんな風に泣いてくれる人素敵な人。
私は先生以外知らない。
昇降口まで先生がおくってくれたけど、その間ずっと泣いていた。
でも最後に
「俺を好きになってくれてありがとな」って笑顔を向けてくれた。
「こんな可愛い子振るなんてもったいないですよ」
と私も笑顔を返した。
家について、私はすぐに部屋に駆け込んだ。
今まで我慢できてたのが不思議なほど涙が溢れ出てきた。
最後の最後まで優しいなんてずるい。
忘れられないよ。
ずっとずっと泣き続けた。
明日なんて来なくていいとどんなに強く思っても明日はやってくる。
高校卒業した後、友達に先生とあの女が結婚したときいて私はそうだろうなと思った。
前みたいに泣きじゃくったりはしないけど今でも私はあの女のことは大嫌いだし、先生のこともずっと好きだよ。

🕊 𝕖𝕟𝕕 𓂃 𓈒𓏸 💗

11/26/2022, 2:28:17 PM