内緒だよ。
誰にも言っちゃダメだよ。
こういうの、トップシークレットっていうんだって。
「好きだよ」
耳に囁く声は、頭の先をじんと痺れさせた。
「私も」
微笑みながら頬ずりすると、彼はぎゅうと抱きしめてきた。
「今日は無視してごめんね」
「いいの、お仕事だもの」
私たちは政略結婚だった。でも、仲良くはできない。私たちの国民たちはそれほど多くの血を流してしまったから。どちらかの愛が表に出れば、裏切り者と糾弾されてしまうだろう。
愛を示してはいけない。我々が愛しているのは領民だから。
愛を残してはいけない。我々が愛すべきはこの土地だから。
「赤ちゃん、欲しいんだけどな」
「もう少し、タイミングをはからないとな」
くすくす、と鼻をこすりあいながら囁きあう。すべてを捨ててもいいと思うような相手だけど、相手のすべてを捨ててほしいとは思わない。そんな気持ちから始まった内緒の結婚生活。
「君に早く僕を刻みつけたい」
「もうとっくに傷だらけだよ」
互いが触れるのに唯一許された鳥籠の中で、私たちは鳴き声をさえずりあった。
【secret love】
9/4/2025, 8:27:48 AM