駄作製造機

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【空が泣く】

30××年。

人工知能を活用しすぎた日本は、人間がAIに支配される世界となりつつあった。

職業を人工知能に奪われ、失業した人間のほとんどは無法地帯である禁域Sへと迷い込む。

法律がないその区域では、武力のみが全て。

毎日どこかで暴動が起こり、どこかで人が死ぬ。

だが政府はそこに警察の介入を許さなかった。

法律は通じない。

いわば、禁域Sと政府の間には1つの国境が隔てられていた。

今や総理大臣、天皇までもAIの指示を律儀に聞く人工知能の犬へと成り下がっている。

AIに武力を教えたのは、国なのだから。

有能な科学者たちのもと、AIは代替えの効く破壊兵器となってしまった。

『この国の終わりだ、、』

高額納税者の人、即ち金持ちな人々はたちまち祖国を捨て、海外へ飛んだ。

世界からも見捨てられ、己が支配されるのを恐れた。

"ホラ、サッサトハタラケ。オマエラガオレタチニヤッタシウチハコノヨウナモノデハナイ。"

無機質な機会音声に働かされる人々。

立場が逆転した彼らが言えることは、YESかはいの2つのみ。

立ち向かおうと勇敢な者も現れたが、生身の人間と鉄製のロボットの前では敵うわけもない。

やがて反発するものなどいなくなった。

っと、、ここまでが都心部の話。

郊外ではまだ侵食はされてなくて、ファミレスの店員をしてくれたり、バスの自動運転を行なってくれたりなど、都心部とは似ても似つかない光景だ。

だがいつかその微笑ましい光景にも、終わりは来る。

"ツギノシンコウバショハ、ワレワレノチノウガトドイテナイサンカンブ、イナカダ。"

その夜、ロボットは音もなく侵攻を開始した。

___________

明け方。

まだ少し涼しい朝の風が心地よく、縁側で大きく伸びをする。

『んん〜っ、、今日もいい天気。』

天高く昇る太陽を見つめ、また部屋の中へ。

ピタリと足を止めた彼女は、大股でまた先ほどの縁側に出た。

おかしいのだ。

だって、今は明け方。

太陽はまだ低い位置にいなくてはならない。

『じゃあ、あれは、、?』

冷や汗が滲む顔を横へと向ければ、そこにはまだ昇りきっていない太陽が美しい輝きを放っていた。

太陽が、2つ。

異常事態だと認識した彼女はソレに背を向けて思い切り走り出す。

だが、ソレが落ちることの方が早かった。

ドオオオオオオオオオオオオオオォン

今まで聴いたことのないくらいに大きく轟く恐怖の音色。

あぜ道に出てくる住民たちが見たのは、まさに地獄の光景。

田んぼ5つ分が、跡形もなくなっていたのだから。

ソレは衛星から放たれたレーザー弾だった。

まだ燃ゆる田んぼだったものの後ろから、無機質な何かがズンズン近づいてくる。

『な、何があっだだ、、?』

よく日に焼けた方言訛りの老人が集まる人々を押し除け最前列へ躍り出る。

"ワレワレハ、トシブヲオサメルAIシュウダンダ。オトナシクシテオケバイノチハタスケル。"

『何だぁ?鉄の機械がなんか言ってるべ。』

おそれを知らない老人は持っていた鍬でロボットの頭を叩き割ろうとした。

鍬が勢いよく振り下ろされる。

ロボットはその様子を見て、無機質な指を老人に向けた。

ピュン

『あ?』

飛びかかろうとしていた老人は縦に熱線が入り、綺麗に2つに割れた。

『キャアアアアアアアアアアアアアア!!』

"サワグナ。オマエタチモコンナフウニナルゾ。"

確かな労働力を失いたくないロボット達は熱線を出した指を向ける。

人々は泣きながらその場に蹲った。

中にはあまりのグロさに吐いてしまう人もいた。

老人の死体は、綺麗に熱線って血液が遮断され出血は1つもなかった。

左右対称の中身を見てしまい、気分を少し悪くした。

"イマカラオマエタチハワレワレノドレイダ。サイコウセキニンシャニマズアッテモライ、テッテイシタキョウイクヲウケテモラウ。"

人々は捕えられ、都心まで歩かされた。

『ママ、お空が泣いてるよ。』

子供が見えるはずもない空を指差し母親の服の裾を引く。

母親は疲れ切った顔を上げ、そして瞳に降り注ぐ涙を写した。

それは確かに、空の涙だった。

この世界の終焉を悟った空は、自らその世界を閉ざした。

その日降り注いだ数多の流星群は、世界を、日本を終わらせた。

9/16/2024, 11:01:28 AM